2006年に韓国の教育過程評価院から発表された資料によると,経済協力開発機構(OECD)の会員である29か国と,非会員である11か国の15歳の学生(高校1年生)あわせて28万人を対象とした調査の結果,韓国における家庭でパソコンが利用できる学生の比率は98%でした.これは,OECDの平均値の85%を超える高い数値となりました.
この中で,コンピュータの使用目的を「ゲーム」と答えた学生の比率は,全体の57%でした(表1).一方,プログラミングが目的でコンピュータを使っている学生は,全体の8%に過ぎません(表2).これはOECDの平均値である23%に比べて,たったの1/3に過ぎません.これにより,韓国の学生によるパソコンの利用は,インターネットとゲームに集中しているということがわかりました.
とくに,ゲームに対する熱情には驚くべきものがあります.テレビ番組でゲームのリーグ戦が中継されていて,この番組から「プロゲーマ」という新しい職業が誕生したほどです.韓国のIT企業がプロチームを運営しているのですが,プロゲーマの年俸はなんと約1,000万円にも上ります.これは一般的なサラリーマンの23倍の金額です.
中にはアイドル・スターとなってしまった選手もいます.代表的なアイドル・スターは,イム・ヨハン選手です.「Starcraft」というゲームで活躍しており,ファン・クラブまであるのです.
最近では,海外からのプロゲーマたちまで登場してきました.しかしながら,不思議なことに,ゲームの本場である日本からのプロゲーマはまだいないようです.
プロゲーマたちは,戦士のような服装で客席にある大型舞台に登場します.彼らのファンたちはゲームの間中,終始嘆声を上げています.そして,プロゲーマになれるその日をめざして,多くの若者たちが日々,実力を磨き上げています.このあたりは,日本のオタク文化と似ているかもしれません.
プロゲーマの登場と人気に押されて,韓国のゲーム市場は恐ろしい速度で発展しています.ゲームは単純に楽しむものではなくなりました.ゲーム業界には多くの資本が流れ込み,強大な市場を形成するようになりました.しかし,この裏面には否定的な側面もあります.
極端にゲームにのめり込む人々が増えているのです(図7).若者から果ては40代まで,勉強や仕事,家族といったものを捨てて,インターネット・カフェに泊り込み,オンライン・ゲームにのめり込んでいる“ゲーム中毒者”たちです.
とくに学生たちの問題はたいへん深刻な状況にあります.韓国の親たちは,毎日,オンライン・ゲームと戦っているのも同然です.子どもたちは部屋に閉じこもってゲームに夢中になり,親が部屋へ足を踏み入れると「プライバシを侵害するな!」と反発してくるこのことについて,親たちは「部屋に入った子供が他人のように感じる」と悲しみ,ゲームを憎んでいるのです.
ゲームという媒体で家族間の会話がなくなり,それによって家庭が破綻状況に陥ったことによる犯罪も増えています.
パソコンに対する優れた能力を持ち,これから優秀な人材となり得る子供たちがゲームに飲み込まれてしまうことに対して,韓国社会は憂慮しています. |